2024年08月17日
【化学への招待】生活の質を高める香りの秘密
講演・セミナー登壇
2024年8月7日、8日 10:00~16:00
東北大学レアメタル
グリーンイノベーション研究開発センターにて
第339回 化学への招待
香りの効果を知って香る製品を作ってみよう
〜生活の品質(Quality of Life)を高める
香りの秘密〜
を開催しました。
対象者は、中学生、高校生、一般
参加者も講師もお手伝いの大学院生も
全員で自己紹介。
香る製品として、スキンケアクリームと
恋する石けん作りの実習があるので
そこに出てくる物質を化学的に理解することから。
そのために元素記号、原子量、化学式、
分子量を知るところからスタートしました。
C,H,Oの原子量
水H2O、二酸化炭素CO2の分子量
東北大学渡邉教授より油の話
・石油から取れる油
・植物などが作り出す天然の油
それぞれの共通点は、アルキル鎖があること。
アルキル鎖とは、CとHからなる構造の1つ
例としてブタンが取り上げられました。
石油から取れる油は、CとHから
できているものがほとんどですが、
天然の油は、そこにOが含まれること。
脂肪酸と呼ばれるアルキル鎖を持つ化合物が
グリセリンと結合した化合物であること。
植物油の分子構造は、
1つのグリセリンに脂肪酸が3つ結合した形をしていて
「トリアシルグリセロール」というもの。
動物油と植物油の違い
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
身近にある植物油に含まれる
トリグリセリドの脂肪酸の組成は、
油によって異なること
図解で確認しながら見ていきました。
そしてトリアシルグリセロールの1つ
トリオレインについて考えてみるというパート
トリオレインは、オレイン酸3つが
グリセリンと結合したもの。
トリオレインの化学式を書いて
分子量を計算してみようという
手と頭を使う時間。
大学院修士2年生がそばについて
みてあげてくれました。
さて、そんな分子量の大きさを実感してもらいながら
スキンケアとして塗布する油についてのパートへ。
お肌の構造と働きを知り、
油でできることと精油でできることを
考える時間です。
今回は、スキンケアオイルとして
米油とホホバ油を紹介し、
それぞれお肌に対して
どのような働きをするのか
知っていただきました。
お肌の話や精油の香りの話は、
男子には、退屈なところかなと
思うのは偏見で、
1番前に座っていた中学生の男の子が
うんうん頷きながら
話を聞いて、メモしている姿が
印象深かったです。
座学が終わった後は、隣の場所に移動して、
スキンケアバーム(軟膏)作りを
していただきました。
ここでは、今日勉強した油が
肌を保護するという目的の実習
また、精油でご紹介したのは、
黒文字、薄荷、柚子の和精油3種と
フランキンセンス、ゼラニウム、ベチバー、
ラベンダーを合わせた合計7種類
これらを使って香りのブレンドに
挑戦してみる!
香りは、ブレンドすると
新しい香りが生まれます。
それぞれの働きが相乗する
こともあり、
それぞれの感性で自由に
香りを重ね合わせて
バームに含ませました。
自分だけのスキンケアバームの完成です。
ここで1時間半弱 お昼休憩に。
学食やカフェテリアなど
大学の雰囲気を味わったり、
校内にはたくさんの椅子とテーブルがあるので、
お弁当を広げたり・・・。
学食に行かれた方からは、
ハラルメニューもあり、
グローバルな雰囲気を感じられたと
おっしゃっていました。
午後は2班に分かれて、
超臨界二酸化炭素抽出設備見学。
大型、中型、小型の設備が
2棟に分かれて設置されています。
こちらの写真は、大型装置があるお部屋。
設備の原理と説明、
香りとしてはこれまで
黒文字や柚子
食品ではコーヒーからカフェインを
抽出し、カフェインレスのコーヒーや
米糠から米油を取り出したり、
鰹節の香りを抽出している話。
また
現在、リチウムイオン電池の正極材に用いられている
レアメタルの回収プロセスは煩雑であることや
毒性がある有機溶媒を使用しているため
環境に優しい超臨界二酸化炭素を用いることで、
煩雑だったプロセスの簡略化をはかっているという話、
大学の研究室はどんなことをするのか
どんな雰囲気なのか
質問したりそこにいるだけで
肌で感じられていることも
あるようでした。
この機器の窓から見えているのは
超臨界状態から温度が下がってきている途中
つまり、見えている上部が気体の二酸化炭素、
下部に見えているのが液体の二酸化炭素
だんだんと液体が見えなくなってきます。
香りの取り出し方で
国内で一般的に取られている方法が
水蒸気蒸留法
写真は、その原理を小型化しているもので、
黒文字を蒸留しました。
また、午前中に作っていただいた
スキンケアバームとこれから作る
米油の恋する石けんで使う
7種の精油の製造法、特徴、効果を
知っていただきました。
さぁ、いよいよクライマックス
米油の恋する石けん作りへ
今日、勉強した油が今度は、
汚れを落とすというものに変わります。
同じ油が肌を保護するものにも、
汚れを落とすものにも・・・
化学の面白さを感じていただけるように。
この時間になると、参加者同士、
とても仲良くなって、
テーブルごとに盛り上がっている様子も
見られました。
ピペットの使い方や計量の仕方を
大学院生に教えてもらいながら
順番に材料をはかりとり、席について
作業に取り組みました。
石けん作りは、劇物である
苛性ソーダを使用するので
安全への留意が1番気を遣うことですが、
大学院生5人のサポートにより
目も手も十分行き届くことができました。
それぞれ5個ずつの丸い石けん。
9月10日以降使えるようになります。
自分で作成したもの以外に
お土産は、三和油脂さんの米油と
米ロウの手作りキャンドルセット
講座の最後の締めくくりは、
渡邉教授の話。
物質が変化し、構造が変わったり、
新しい物質が生まれたりする。
色が変化したり、新しい性質を発見したり・・・
「化ける」こと。
そこに面白さがあり、
それを使って社会の課題を解決する
可能性の宝庫でもあります。
世界を変える化学。
みなさんが化学に興味を
持ってくれたら嬉しいです。
(要約)
横浜からお一人いらしてくださった
生徒さんからこんな感想をいただきました。
先生方のわかりやすくかみ砕いた言葉で、
脂質の話から香りの話、
香りを取り出す超臨界二酸化炭素抽出法の話など、
身近なものに例えながらご説明頂き、とても勉強になりました。
それらの組み合わせによって、
日常で使っているスキンケアクリームや
石けんが手作りでできるという一連の流れが
ストーリーとして組み立てられており、
なかなかこのようなワークショップは
受講できないのではないかと思いました。
著名な講師の先生方の講義と実習が付いて、
無料だなんて、まずあり得ない機会です。
参加者は中学生と保護者、
またモチベーションを持って化学に関心のある
一般の方と幅広い印象でしたが、
参加者の視点でそれぞれが学び、
楽しめる講座であったと思いました。
私のテーブルでは理科の先生をなさっている
中学生のお母さん、お仕事をされながら
ご自身ももう一度勉強を始めたいと
モチベーションが高い小学生の
お母さんがいらっしゃっいました。
理科の先生のお母さんは、学園祭などで
こういった体験コーナーが
できないかとおっしゃっていました。
小学生のお母さんの方は、
お子さん達にも化学に興味を持って欲しい、
一緒に勉強したいとお話して下さって、
皆さん、この講座に何かしらの
目的をお持ちのようでしたが、
実習では素直に香りのブレンドを楽しんだり、
身近にある油脂が食べるだけでなく、
日常に使われるものに変身できるんだ、
でもこれ固まらないね~とか、
和気あいあいとおしゃべりしながら
楽しむことができました。
石けんの方は皆で香りのレシピと
石けんを交換しあいました。
きっと来月石けんが完成した時に
この講座のことと、ご一緒した皆さんを思い出しながら
使うのかなと今からとても楽しみです。
また研究室や超臨界二酸化炭素抽出装置の見学なと、
大学での教育・研究の現場に触れる機会を頂き
とても有意義な時間でした。
学生さんの日々の頑張りが感じられて、
東北大学で勉強したいと思ってしまいました。
中学生や保護者の方はとても喜ばれていたと思います。
横浜から行く価値がある!そんな貴重なプログラムでした。
急遽、参加させて頂きありがとうございました。
またお子さんだけで参加された
お母様からは、
化学に興味を持てる楽しい時間をありがとうございました。
たくさんのお土産を頂いてニコニコ笑顔で帰って参りました。
難しい化学式を分かりやすく説明してくださり、
バームや石鹸を作らせて頂いた時間は本当に楽しかったようです。
帰ってきてから、楽しかったと何度も話しておりました。
とても良い香りのバームで大事に使いたいと嬉しそうです。
化学に興味のある同い年ぐらいの子供たちとの交流も楽しく、
みなさんと交換した石鹸も宝物のようです。
またお兄さんやお姉さんにもサポートして頂いて
感謝しておりました。
素敵な機会を作って頂いて本当にありがとうございました。
このような言葉は、
イベントを企画・
私たち、
学びも多かったと実感してい
楽しんでいただけたことは何よりの喜びです。
ご参加いただき楽しんでいただけたこと、
喜んでいただけたこと、
〜東北大学 渡邉賢教授より〜
大学時代の同級生で
学部時代の同研究室同士、
一緒に講座をやるのは、2回目ですが、
内容の企画からテキスト作成、実施に至るまで
トータルに行ったのは、初めてです。
自分だけの香りのある恋する石けんを作ったり、
バームを作ったり
その身近に使える、暮らしの質を高めることを
通して、化学の面白さ、興味喚起、新しい発見などに
繋がるようにと思いを込めて開催。
講座のタイトルは「香り」が前に出ていましたが、
実は裏方で表に出ていたのは、油の話でしたね。
その準備から当日の参加者の皆さんとの
交流、大学院生のサポートから
私自身も学ぶことが多く、
このような機会に心から感謝いたします。
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